電子廃棄物からの回収貴金属の市場規模、2025年には118億米ドルに到達予測 シアン化物浸出法による環境への影響が懸念材料

電子廃棄物からの回収貴金属の市場規模は、2020年の94億米ドルからCAGR4.6%で成長し、2025年には118億米ドルに達すると予測されています。アジア太平洋地域の新興国における貴金属への投資の増加、最終使用産業からの需要、電子廃棄物処理の必要性が、電子廃棄物からの回収貴金属市場の成長を牽引する主な要因となっています。

COVID-19の電子廃棄物からの回収貴金属市場への影響

電子廃棄物からの回収貴金属市場のサプライヤーには、Johnson Matthey Plc(英国)、Sims Limited(米国)、EnviroLeach Technologies (カナダ)、Umicore NV (ベルギー)、Materion Corporation (米国)、Boliden AB (スウェーデン)、DOWAホールディングス(日本)、Heraeus Holding GmbH(ドイツ)、TES-AMM Pte(シンガポール)、TES-AMM Pte.(シンガポール)、Metallix Refining(米国)、などがあります。これらの企業は、アジア太平洋、欧州、北米、南米、中東・アフリカの各国に製造拠点を有しています。COVID-19は彼らのビジネスにも影響を与えています。

牽引要因:産業用および投資ツールとしての貴金属需要

工業用途の使用から、銅、金、銀、プラチナ、パラジウムなどの貴金属の実需は増加しています。銅は貴金属の中で最も豊富で安価な金属であり、優れた電気伝導性と熱伝導性を持っています。その結果、銅は電力伝送、配管、調理器具などに広く使用されています。金は、その高い導電性と耐腐食性のために、主に電子機器、医療、歯科用に使用されています。また、医薬品製造における化学触媒としても使用されています。しかし、金の需要は主に宝飾産業の影響を受けています。銀は主に写真撮影に使用されてきましたが、現在では太陽電池や携帯電話、ノートパソコンのバッテリー製造など、新たな分野でも需要が高まっています。プラチナとパラジウムは、延性があり、可鍛性があり、耐薬品性に優れています。そのため、電子機器、自動車の排ガス制御装置、化学反応の触媒として広く使用されています。しかし、プラチナとパラジウムは、銅、金、銀に比べて存在量が多くありません。すべての要因が重なり、世界の貴金属市場は活発な動きを見せています。

抑制要因:貴金属回収におけるシアン化物浸出法に関する問題点

電子廃棄物から貴金属を回収する場合、一般的には、電子廃棄物を粉砕したものを大型タンク内でシアン化ナトリウム水溶液と混合して行う「槽浸出法」が採用されています。シアン化物浸出は非常に効率的であるため、貴金属を有益に回収することができます。しかし、シアンは非常に有毒な化学物質であり、環境への影響や公衆衛生上のリスクをもたらす可能性があります。シアンの流出は、飲料水の汚染、農地の破壊、人命の損失につながっています。シアン化物水溶液は日光で急速に分解しますが、シアン酸塩やチオシアン酸塩のような毒性の低い生成物は、土壌中に数年間残留する可能性があります。地下水へのシアンの流出は長い期間停滞し、飲料水の帯水層を汚染する可能性があります。

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