硫酸の市場規模、2027年に285億米ドル到達予測

硫酸の市場規模は、2020年の132億米ドルからCAGR11.7%で成長し、2027年には285億米ドルに達すると予測されています。農業分野における硫酸の使用量の増加、および幅広い化学製品の製造における硫酸の使用が、今後の市場を牽引すると考えられます。

牽引要因:各種産業における硫酸の高い需要

硫酸は、化学産業における数多くの用途に幅広く使用されていることから、「化学品の王様」と呼ばれています。また、原料や加工剤として最も広く使用されている工業用化学品の一つで、塩酸、硫酸塩、硝酸、リン酸、合成洗剤、染料、顔料など、多くの一般的な化学製品の製造工程で使用されています。硫酸の主な最終使用産業には、自動車、石油化学、金属精錬、繊維などがあり、その最も有望な用途は、半導体、洗剤、殺菌剤などの工業薬品の生産が挙げられます。

抑制要因:健康や環境に対する懸念

硫酸は、石炭や石油、ガスなどを燃やした際に発生する二酸化硫黄から大気中で生成されます。放出された二酸化硫黄はゆっくりと三酸化硫黄を形成し、空気中の水蒸気と反応して硫酸を生成します。硫酸は、さまざまな時間、空気中に浮遊していることがあり、雨に含まれる硫酸は、酸性雨の原因となります。酸性雨は、環境だけでなく、人間の健康、森林や野生生物にも極めて有害で、地中にしみ込むと、マグネシウムやカルシウムなど、樹木や自然の植物相の成長・発達に欠かせない栄養素を溶かしてしまいます。これらの事が硫酸市場の成長を抑制する要因となっています。

市場機会:廃水処理における硫酸の使用増加

硫酸は廃水処理において重要な役割を担っています。廃水処理は環境保護のために行われるプロセスであり、硫酸は廃水のpHレベルを正常に戻すために最も広く使用されている化学物質で、pHを中和し、ポリマー、ミョウバン、塩化第二鉄などの固体粒子を除去するのに役立ちます。また、排水中の悪臭を抑制・防止し、病気を引き起こす病原体を破壊する働きもあります。化学処理に硫酸を使用することで、水と汚泥を分離することができます。

課題:急激な価格上昇

硫酸は、川下の化学肥料産業で大きな需要があります。様々な輸入規制により、輸入硫黄の価格が大幅に上昇しています。硫酸の価格は、2020年後半から上昇を続けており、2021年7月にはさらに価格が上昇しました。中国は世界でも有数の硫酸生産国で、中国東部の製錬硫酸の平均市場価格は、2020年の15米ドル/トンから2021年には120米ドル/トンに上昇しています。価格の急激な上昇は、市場の成長にとっての課題となる可能性があります。

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