アンモニア市場、2028年に1,038億米ドル規模到達見込み
市場の概要
世界のアンモニア市場は、2022年に757億米ドルの規模に達しました。2023年から2028年にかけて、市場は5.2%のCAGRで成長し、2028年には1,038億米ドル規模に達すると予想されています。
アンモニア(NH3)は、無色透明の気体で、強い刺激臭があるものを指します。窒素と水素を触媒の存在下で反応させるハーバーボッシュ法で工業的に製造される無機化合物です。尿素、硝酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硫安などの窒素系肥料の製造に広く用いられ、窒素を土壌に放出して植物や作物の生育を促進します。また、アンモニアは、農業、繊維、食品・飲料(F&B)、医薬品、水・廃水処理、ゴム、製紙、化学など、さまざまな産業で幅広い用途が見いだされています。
市場の動向
農作物の収穫量を向上させ、急増する食糧需要を満たすために、肥料などの農業用化学物質へのニーズが高まっていることが、市場を牽引する主な要因となっています。また、アンモニアは周囲から熱を素早く吸収し、不純物をろ過し、環境に悪影響を与えることなく液体媒体を精製することができます。そのため、アンモニアは水処理プラントの浄化剤、暖房・換気・空調(HVAC)システムの冷媒として急速に普及しつつあります。このほか、トリニトロトルエン(TNT)、ニトログリセリン、ニトロセルロースなどの商業用爆薬の製造におけるアンモニアの使用量の増加が、製品の需要を高めています。さらに、アンモニアは合成樹脂の製造や絹、綿、羊毛の染色・精練に触媒として使用されています。これは、プラスチックやナイロン、レーヨンなどの合成繊維の生産におけるアンモニアの利用が増加していることと相まって、市場の成長を促進する要因となっています。さらに、家庭用洗浄剤におけるアンモニアの用途の増加や、合金板の表面を硬化させる窒化処理などのさまざまな冶金工程が、製品の導入率を加速しています。その他、農業の拡大、エネルギー消費システムへのシフト、新興産業への応用、人口の増加、急速な都市化などが、市場に明るい展望をもたらす要因となっています。