水素の中東・アフリカ市場、2032年にかけてCAGR6%で成長予測
世界的なエネルギー需要の拡大により、水素の市場規模は2023年から2032年にかけて顕著に拡大します。
米国EIAの推定によると、世界の液体燃料の消費量は2023年に140万b/d増加し、2024年にはさらに180万b/d増加するとされています。しかしながら、化石燃料の大量消費により、二酸化炭素の排出とその環境影響に関連する懸念を増加させ、水素のような持続可能な代替燃料の必要性が強調されるようになりました。差し迫ったエネルギー危機に対処するため、水素の製造プロセスを促進する官民のイニシアチブが展開されています。
各国政府が、増大するエネルギー需要を満たし、持続可能性目標を達成するために、水素の可能性に期待しています。例えば、インドは2047年までにエネルギー自給率を高め、2070年までに排出量ゼロを達成することを目指しており、再生可能エネルギーの導入が必要となっています。
グリーン水素は、再生可能エネルギーの長期貯蔵、クリーンな輸送、航空、分散型発電、海上輸送のための有望なソリューションとなります。2023年1月、インド連邦内閣は、年間5MMTの生産能力を目指す「National Green Hydrogen Mission」を承認しました。
水素市場は、タイプ、アプリケーション、地域別に分類されます。
タイプ別に、グリーン水素、ブルー水素、グレー水素に分類されます。このうち、ブルー水素セグメントは、2022年から2032年にかけて12 MMT以上成長するとされています。厳しい二酸化炭素排出削減基準の実施が、世界的なクリーンエネルギー移行を促進しています。炭素回収・貯蔵(CCS)技術の最近の発展により、大規模な水素製造が可能になりました。
例えば、2022年11月、カナダのアルバータ州政府は、産業ハートランドにある新しいブルー水素エネルギー施設に4億7500万米ドル以上を投資することを発表しました。連邦政府は、費用対効果やエネルギー効率の高いブルー水素に切り替えることで二酸化炭素排出量を削減するためにブルー水素に注目しており、2032年までの市場成長に有利に働くと思われます。
用途別に、環境に優しく持続可能な製造業への注目が高まっていることから、化学分野の水素需要が2032年までに大幅に増加することが考えられます。水素はメタノールやアンモニアを製造するにあたり原料として使用され、排出ガスの削減に貢献します。化石燃料の依存を減らし、再生可能エネルギーへの転換を図るため、水素エネルギーをより身近で安価なものにしようと、化学メーカーによる世界的な取り組みが、製品需要を押し上げています。
地域別に、中東・アフリカ市場は、多数の水素貯蔵施設の存在に牽引され、2032年にかけてCAGR6%で成長すると予測されています。中東・アフリカ地域で利用可能な豊富な資源、大手エネルギー企業の存在、世界的な協力関係の高まりが、市場の拡大を後押ししています。例えば、2022年5月、英国石油会社(Bp)は、マスダールおよびアビダビのADNOCとの提携を拡大し、イングランドの特定地域でブルーおよびグリーン水素の開発を後押ししました。